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神経を取ったのに痛い…そんな不安を感じていませんか?
「神経を取ったのにズキズキ痛む…」
「治療したばかりなのに噛むと痛い…」
「このまま様子を見ても大丈夫?それとも治療は失敗だったの?」
根管治療を受けたあと、このような不安を感じる患者さんは少なくありません。
「神経を取ったのだから、もう痛みはなくなるはず」と思われる方が多いため、治療後に痛みがあると「治療がうまくいかなかったのではないか」と心配になるのも無理はありません。
しかし、実際には根管治療後に一時的な痛みが生じることは、決して珍しいことではありません。
一方で、痛みの原因によっては追加の検査や治療が必要になる場合もあります。
大切なのは、「痛みがあるかどうか」ではなく、「なぜ痛いのか」を正しく見極めることです。
この記事では、日本歯内療法学会専門医の立場から、根管治療後に痛みが起こる原因や受診の目安について分かりやすく解説します。
この記事を読むと分かること
この記事では、次のような疑問についてお答えします。
・根管治療後の痛みは治療の失敗なのか?
・根管治療後に痛みが出る原因とは?
・原因ごとの対処法と受診の目安
「自分の痛みは大丈夫なのだろうか」と不安を感じている方の参考になれば幸いです。
神経を取ったのに痛い=治療の失敗、ではありません
「神経を取ったのだから、もう痛みは感じないはず。」
そのように考えるのは自然なことです。
しかし実際には、神経を取ったあとでも痛みを感じることはあります。
例えば、
・治療そのものによる一時的な刺激
・根の先に炎症が残っている
・噛み合わせが高くなっている
・歯の根にヒビが入っている
・歯ではない場所が原因となっている
など、根管治療後の痛みにはさまざまな原因が考えられます。
そのため、「神経を取ったのに痛い」という症状だけで、
・治療は成功した
・治療は失敗した
と判断することはできません。
実際には、痛みの種類や強さ、いつから痛み始めたのか、噛むと痛いのか、何もしなくても痛いのかなど、多くの情報を総合的に判断する必要があります。
「痛いから治療は失敗だった」と自己判断し、すぐに歯科医院を変えることはおすすめできません。まずは担当の歯科医師に相談し、なぜ痛みが出ているのかを検査・診断してもらうことが大切です。
そのうえで、説明や治療方針に疑問や不安がある場合には、根管治療に精通した歯科医師へ相談することも一つの選択肢です。
根管治療後の痛みは大きく3つに分けられます
根管治療後の痛みは、原因によって大きく3つに分けられます。

① 歯の中が原因となっている痛み
神経を取る治療では、歯の中の神経(歯髄)を取り除きます。
しかし、歯の内部(根管)は非常に複雑な形をしているため、
・神経を完全に取り除くことが難しい場合がある
・見つけにくい根管を見逃してしまう
などが原因となり、痛みが続くことがあります。
② 歯の外側が原因となっている痛み
歯の中の神経をすべて取り除いたあとでも、歯が痛みを感じることがあります。
「神経を取ったのに、どうして痛みを感じるの?」
と思われるかもしれません。
実は歯の周りには「歯根膜」というクッションのような組織や、その外側に骨があります。
これらにも痛みを感じる神経があるため、歯の神経を取ったあとでも炎症や刺激によって痛みが出ることがあります。
実際には、このタイプの痛みが比較的多くみられます。
③ 痛みを感じている歯以外が原因となっている痛み
実は、「歯が痛い」と感じていても、原因が歯ではないことがあります。このような痛みは「非歯原性歯痛」と呼ばれます。
例えば、
・顎や頭の筋肉の痛み
・頭痛
・神経の異常
・まれに全身の病気
などが、歯の痛みとして感じられることがあります。
一方で、原因は歯にあるものの、痛みを感じる歯が実際の原因とは異なることもあります。これを「歯痛錯誤(関連痛)」といいます。
このように、患者さんが痛みを感じている場所と、本当の原因が一致しないことも珍しくありません。
痛みの原因を見極めることが大切です
ここまで読んでいただくと分かるように、
「神経を取ったのに痛い」という一つの症状の中にも、さまざまな原因が隠れています。
そして、その原因によって必要な対応は大きく異なります。
例えば、
・様子を見ることで改善する痛み
・追加の根管治療が必要な痛み
・噛み合わせを調整することで改善する痛み
・根管治療以外の治療が必要な痛み
など、治療方針は一つではありません。
痛み止めで治まる程度の軽い痛みであれば、そのまま経過をみることができる場合もあります。
一方で、痛み止めを飲んでも治まらない強い痛みや腫れがある場合、あるいは痛み止めが必要な状態が長く続く場合には、追加の検査や治療が必要になることがあります。
ここからは、それぞれの原因について、「なぜ痛みが起こるのか」と「どのように対処するのか」について分かりやすく解説していきます。
① 歯の中の神経(歯髄)が原因となっている痛み
神経の取り残し
なぜ痛みが起こるの?
歯の神経がある根管は非常に複雑な形態をしているため、1回の治療ですべての神経を取り除くことが難しい場合があります。神経が一部残っていても症状が出ないこともありますが、治療中の刺激により、治療後の痛みが出るケースもあります。
また、治療前にズキズキと痛んでいたような歯では、術後の痛みが出やすくなります。

このような場合はどう対処する?
通常は根管内に薬剤を入れて経過をみると、痛みは時間とともに落ち着くことが多いです。しかし、痛みが改善しない場合や強い痛みを感じる場合は早めの追加処置が必要になることがあります。
神経をできるだけ取り残さないためには、十分な時間をかけて一本一本の根管を丁寧に処置することが重要です。
また、最も大切なのは、神経を取らなければならないほど虫歯を進行させないことです。
定期検診で虫歯を早期発見・早期治療することが、結果的には根管治療を避ける一番の方法になります。
見逃された根管(見逃し根管)
なぜ痛みが起こるの?
歯の根の形は人それぞれ異なります。
特に奥歯では、非常に細く見つけにくい根管が存在することも珍しくありません。
根管が治療されずに残ってしまうと、神経や細菌が取り残され、炎症や痛みの原因になることがあります。

このような場合はどう対処する?
見逃された根管は、歯科用CTで根管の形態を立体的に確認し、マイクロスコープを用いて拡大しながら慎重に根管を探します。見逃された根管を適切に治療することで、痛みが改善することは少なくありません。
また、どの歯に見逃されやすい根管があるのかを熟知していることも、適切な根管治療には欠かせません。
② 歯の外側(歯根膜や骨)が原因となっている痛み
歯の神経を取ったあとでも痛みを感じることがあります。それは、歯の周囲にある歯根膜や骨にも、痛みを感じる神経があるためです。

根管内に細菌が残っている場合
なぜ痛みが起こるの?
根管治療の目的は、単に神経を取ることではありません。最も大切なのは、根管内の細菌をコントロールすることです。
神経(歯髄)が大きく炎症を起こしたり壊死したりすると、自然に元の健康な状態へ戻ることは難しくなります。そのため、抜髄(生きている神経を除去する処置)では炎症を起こした歯髄を取り除くとともに、細菌の栄養源となる歯髄を除去することで、根管内で細菌が増えにくい環境をつくります。
一方、すでに細菌が侵入している感染根管治療では、根管内の細菌をできるだけ減らし、再び細菌が増えない状態を維持することが重要です。
しかし、根管は非常に複雑な形をしているため、細菌を十分に減らすことは簡単ではありません。
根管内に多くの細菌が残存すると、細菌や、その細菌が作り出す毒素によって、歯の周囲の組織に炎症が起こり、痛みが生じます。

このような場合はどう対処する?
根管治療で大切なのは「根管内に細菌を入れないこと」と、「すでに侵入している細菌をできるだけ取り除くこと」です。
治療中に細菌が根管内へ入らないようにするためには、ラバーダム防湿が最も重要です。
ラバーダムは唾液に含まれる細菌が歯の中に入らないようにする役割があり、根管治療では基本となる処置の一つです。
さらに、細菌の除去には次亜塩素酸ナトリウム水溶液やEDTAなどの洗浄液を使用し、根管内を十分に洗浄・消毒しながら治療を進めることが重要です。
根管治療の成功率を高めるために大切なポイントについては、「根管治療(歯の根っこの治療)で後悔しないために。根管治療の失敗と成功を左右するものとは!?」で詳しく解説しています。
フレアーアップ
なぜ痛みが起こるの?
治療前にはほとんど痛みがなかったにもかかわらず、根管治療後に急激な痛みや腫れが出ることがあります。
これを「フレアーアップ」といいます。(参考文献①)
原因としては、
・治療による刺激
・根の先へ押し出された細菌や削片
・根管内の細菌バランスの変化
などが考えられています。

このような場合はどう対処する?
症状に応じて根管内を再度洗浄し、必要に応じて痛み止めや抗菌薬を使用しながら、炎症が落ち着くよう治療を進めます。
突然痛みが強くなると、
「治療は失敗だったのでは?」
と不安になるかもしれません。
しかし、フレアーアップは十分注意して治療を行っていても一定の確率で起こることが報告されています。
歯根破折・穿孔(パーフォレーション)
なぜ痛みが起こるの?
歯にヒビが入っていたり、歯の根に穴が開いていたりすると、その部分に細菌が侵入し、増殖することで炎症が起こり、痛みが生じます。
また、歯が割れている場合は、噛むたびに歯の割れ目がわずかに動くことで痛みが出ることもあります。

このような場合はどう対処する?
このようなケースでは、通常の根管治療だけでは改善しないことがあります。
まずはレントゲンや歯科用CTなどの検査で原因を確認し、その歯を保存できる可能性があるのかを慎重に判断します。
穴が小さい場合には、MTAセメントという材料を用いて、開いた穴をふさぐ治療(パーフォレーションリペア)を行うことがあります。一方で、穴が大きい場合や歯根破折の状態によっては、歯を残すことが難しく、抜歯が必要になることもあります。
治療中の刺激が原因の場合
なぜ痛みが起こるの?
根管治療中の歯は、治療に使用する器具や薬剤の影響で、一時的に敏感な状態になっています。
そのため、
・麻酔が切れてからジーンと痛む
・食べ物が当たったら響く感じがする
・違和感がある
といった症状が現れることがあります。
このような場合はどう対処する?
多くの場合は、時間の経過とともに症状は軽くなっていきます。
根管治療が終了するまでは硬い食べ物を避け、治療した歯に強い負担をかけないようにしましょう。
一方で、まれに治療後1~2日してから痛みが急に強くなることがあります。このような場合は、前述した「フレアーアップ」の可能性もあるため、歯科医院へ早めに連絡しましょう。
仮蓋が高い場合
なぜ痛みが起こるの?
根管治療後は、細菌が歯の中へ入り込まないように仮蓋をします。この仮蓋の高さが高いと、噛んだ際に痛みがでます。
このような場合はどう対処する?
カチカチと上下の歯を咬み合わせたとき、治療している歯が最初に当たり、痛みを感じる場合は、噛み合わせの調整が必要です。また、痛みを感じない場合でも、その状態が続くと、歯に過度な力が加わり、痛みが続いたり歯に負担がかかったりすることがあります。
場合によっては歯が割れる原因になることもあるため、歯科医院へ早めに連絡しましょう。
また、仮蓋は高すぎる場合だけでなく、欠けたり取れたりすると、歯の中に細菌が入り込む原因になることがあります。
仮蓋がボロボロになった場合の対処法については、「根管治療中の仮蓋がボロボロ取れてきたけど大丈夫? 緊急性の有無について歯科医師が解説します!」で詳しく解説しています。
痛みに対して過敏になっている場合
なぜ痛みが起こるの?
治療前に強い痛みが続いていた歯や、長期間炎症が続いていた歯では、痛みを伝える神経の仕組みが過敏になってしまうことがあります。
その結果、通常であればそれほど痛くない刺激でも、強い痛みとして感じることがあります。
専門的には、痛みを起こす刺激を通常より強く感じる状態を「痛覚過敏」、本来は痛くない刺激を痛みとして感じる状態を「アロディニア」と呼びます。
このような場合はどう対処する?
このタイプの痛みは少し特殊で、根管治療が適切に行われていても症状だけが残ることがあります。
そのため、痛みが続くからといって根管治療を何度も繰り返しても、改善しないことがあります。
まずは本当に歯が原因なのかを慎重に判断し、必要に応じて痛みを専門とする医療機関との連携を検討することもあります。
③痛みを感じている歯以外が原因となっている痛み
非歯原性歯痛
なぜ痛みが起こるの?
「歯が痛い」と感じていても、実際には歯そのものが原因ではないことがあります。
このような歯が原因ではない痛みを非歯原性歯痛といいます。(参考文献②)
代表的なものとして、
・咬筋や側頭筋などの筋肉の痛み(筋・筋膜性疼痛)
・片頭痛や群発頭痛などによる関連痛(神経血管性疼痛)
・神経の異常(神経障害性疼痛)
・まれに心臓の病気など全身疾患
などが挙げられます。
そのため、痛みを感じる場所だけを治療しても、症状が改善しないことがあります。

このような場合はどう対処する?
根管治療を適切に行っているにもかかわらず痛みが改善しない場合には、
「本当に歯が原因なのか」
という視点で改めて診査することが重要です。
非歯原性歯痛の場合、そもそもの痛みの原因は歯ではないため、どれだけ歯の治療をしても痛みは消失しません。
そのため、治療前には、患者さんが訴える歯の痛みが本当に歯に由来するものなのかを、十分に検査・診断することが重要です。
必要に応じて、筋肉や顎関節、神経なども含めて原因を考え、歯科以外の医療機関と連携しながら診断・治療を進めることもあります。
非歯原性歯痛は決して多い病気ではありません。しかし、歯が原因ではない痛みに対して歯の治療を繰り返してしまうと、適切な診断や治療が遅れてしまうことがあります。そのため、症状が改善しない場合には、歯だけでなく全身を含めて原因を考えることが大切です。
歯痛錯誤(関連痛)
なぜ痛みが起こるの?
本当は別の歯が原因なのに、違う歯が痛いように感じることがあります。
これを歯痛錯誤(関連痛)といいます。
例えば、
左下の奥歯に大きな虫歯があるにもかかわらず、
患者さん自身は
「左上の歯が痛い」
と感じることがあります。
これは上下の歯の神経が、もともと同じ三叉神経という神経から枝分かれしているために起こる現象です。
歯痛錯誤が生じている場合、患者さんが痛みを訴えている歯を治療しても、本来の痛みの原因の歯が治療されない限り痛みは改善しません。

このような場合はどう対処する?
患者さんが「ここが痛い」と感じる情報は、とても大切です。
しかし、それだけで治療することはありません。
実際には、
・お話を詳しく伺う
・歯を叩く検査(打診)
・冷たいものや温かいものに対する反応(冷温痛試験)
・微弱な電気に対する反応検査(電気歯髄診)
・レントゲン検査
・必要に応じてCT検査
など、さまざまな検査を行います。
患者さんが感じる「痛い場所」と、実際に原因となっている歯が一致しないこともあるため、検査結果を総合的に判断して診断することが重要です。
このような症状がある場合は、早めにご相談ください
根管治療後の痛みの多くは、時間の経過とともに改善していきます。
しかし、次のような症状がある場合には、一度担当の歯科医師へ相談されることをおすすめします。
・発熱や強い腫れを伴う
・痛み止めを飲んでも強い痛みが続く
・腫れが大きくなってきた
・噛むだけで強い痛みがある
・数日経っても痛みが改善しない、あるいは徐々に悪化している
・仮蓋が取れた
一方で、
治療後1〜2日程度の軽い違和感や、噛んだときの軽い痛みなどは、治療による一時的な反応として自然に改善していくことも少なくありません。
大切なのは、「痛みがあるかどうか」だけではなく、痛みの強さや時間とともにどのように変化しているかを確認することです。
私が診療で大切にしていること
根管治療後の痛みは、患者さんにとってとても不安なものです。
「せっかく神経を取ったのに、どうして痛いのだろう。」
「この治療は失敗だったのではないか。」
そのように不安を感じるのは、ごく自然なことだと思います。
だからこそ私は、痛みがあるという事実だけで「すぐ再治療をしましょう」と判断することはありません。
まずは患者さんのお話をしっかり伺い、現在どのような痛みなのか、いつから始まったのか、どのような時に痛むのかを丁寧に確認します。
そして、レントゲンやCTなどの画像検査、必要に応じたさまざまな検査結果を組み合わせながら、
「本当の原因は何なのか」
を一つひとつ整理していきます。
原因が分かれば、様子を見て改善する痛みなのか、追加の治療が必要なのか、その判断もしやすくなります。
私は、痛みという「結果」だけを見るのではなく、「なぜその痛みが起きているのか」という原因を大切に診療しています。
患者さん一人ひとりで痛みの原因は異なります。だからこそ、一人ひとりの症状を丁寧に見極め、できるだけ歯を残せるよう最適な治療をご提案したいと考えています。
まとめ
神経を取ったあとに痛みが出ると、「治療は失敗だったのでは?」と不安になる方は少なくありません。
しかし、根管治療後の痛みには、
・歯の中が原因となっているもの
・歯の外側が原因となっているもの
・歯以外が原因となっているもの
など、さまざまな原因があります。
そのため、「神経を取ったのに痛い」という症状だけで成功・失敗を判断することはできません。
まずは痛みの原因を正しく見極めることが、適切な治療への第一歩です。
もし現在治療中で不安を感じている場合や、痛みが長く続いて心配な場合には、一人で悩まず、まずは担当の歯科医師へ相談してください。
必要に応じて、歯内療法専門医など根管治療を専門とする歯科医師による詳しい検査や診断を受けることで、痛みの原因が明らかになることもあります。
この記事が、少しでも皆さまの不安を和らげ、痛みの原因を正しく理解し、安心して治療を受けていただくきっかけになれば幸いです。
今回も最後までお読みいただき誠にありがとうございました。
本記事は、奈良県大和高田市にある歯医者(歯科医院)、斉藤歯科クリニックの齊藤伸和(日本臨床歯周病学会認定医・日本歯内療法学会会員)が監修・執筆しています。何か不明な点がありましたら、無料相談も受け付けておりますので、是非お気軽にご相談ください。
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参考文献一覧(References)
-
J Endod. 1992 Apr;18(4):172-7. Endodontic interappointment flare-ups: a prospective study of incidence and related factors
R Walton 1, A Fouad
- 日本口腔顔面痛学会:非歯原性歯痛の治療ガイドライン改訂版 2019



