予防歯科
予防歯科
予防歯科とは、歯に問題が起こってから対処する従来の歯科治療とは違い、歯を健康に保つために定期的に歯科医院に通い歯周病や虫歯にならないようしましょう、というものです。
「痛みが出たら歯医者で治療してもらう」を繰り返していると、将来的に歯を失う可能性が高くなります。歯科先進国スウェーデンの研究では、定期的な予防治療(メインテナンス)を受けた患者さまが30年間に失った数はわずか0.6%であることが報告されており、予防歯科の効果が証明されています。(引用1)
トラブルが起こった時だけ治療を受けた場合、治療を繰り返すたびに歯が少なくなり、最終的に抜歯になる可能性が高くなります。
雑誌PRESIDENTの「人生の振り返り」という特集のなかで「今、何を後悔していますか？」というアンケートが55歳～74歳の男女1060人を対象に行われました。その結果、「歯の定期検診を受ければよかった」が健康に関する最も大きな後悔であり、特に70歳を超えるとその傾向が顕著になることが報じられました。(引用2)
また、歯を失ってしまうと美味しく食事ができなくなるだけではなくアルツハイマー型認知症になるリスクが上がることも報告されています。(引用3)
人生100年時代と言われる今、いつまでも健やかなお口で幸せな毎日を過ごすために、歯科医院で定期的なメインテナンスを受けられることをおすすめします。
予防歯科では、歯の表面の細菌の除去や歯磨きに関するアドバイスを行うため、歯周病や虫歯にかかりにくくなります。また、歯周病や虫歯になってしまった場合でも、早期に発見できるのですぐに対処できます。
病気を早期に発見することにより、治療費を抑えることができるだけでなく、痛みを最小限にした治療が可能になります
専門的な機器を用いて歯の表面の汚れを除去することにより、歯の本来の美しさがよみがえります
隅々まで汚れを除去することにより、口臭も改善します
平均寿命が80歳を超えるなか、介護に頼らず自分で最低限の生活ができる「健康寿命」をのばす重要性が指摘されています。歯の本数が多いほど健康寿命が長いことが近年の研究で明らかになってきました。
残っている歯が少ない人や、あまり噛めない入れ歯を入れている人は、脳の海馬や前頭葉が委縮し認知症になりやすいことが報告されています。
歯周病になると、糖尿病に悪影響を及ぼすことが知られています。また高齢者では、口の中の細菌が肺に侵入した場合、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
1.歯周病や虫歯に関する検査
肉眼での確認のほか、プローブという細い器具を使用して歯茎の状態について検査します。必要に応じて、歯の内部や骨の状態を確認するためのレントゲン写真撮影を行うこともあります。また、経時的な変化を確認するためにお口の写真を撮らせていただくこともあります。
2.歯の表面の徹底した清掃(プロフェッショナルケア)
プロフェッショナルケアでは、普段の歯磨きでは取り切れない歯垢や歯石、着色を取り除くプロによるクリーニングです。超音波を使用した機器や、ジェット水流を使用した機器などの特殊な機器を使用することにより、歯周病や虫歯の原因となる細菌の塊(プラーク)やコーヒーやタバコによる着色を徹底的に除去します。
3.歯周病予防の要、セルフケアの強化
歯周病を予防するうえで、最も重要なのは患者さまご自身による日々のケアです。おおくの方は毎日歯磨きをしていますが、正しい方法で磨けている人は残念ながらに多くありません。当院では、お口の環境や歯の質、生活習慣などを考慮したうえで、患者さまに合った最適な予防方法をアドバイスさせていただき、患者さまご自身がより効果の高いセルフケアを行えるようにお手伝いさせていただきます。
4.虫歯予防に最も効果的！フッ素の塗布
フッ素が歯に取り込まれることにより歯の表面構造が強化され、虫歯菌が出す酸に対する抵抗性が高まります。また、初期の虫歯であれば再石灰化を促進し歯を削らずに虫歯を修復する能力を持つなど、フッ素は高い虫歯予防作用を持っています。歯科医院でのみ使用が認められている高濃度フッ素をメインテナンスの際に塗布し、普段はフッ素入りの歯磨き粉を使用することにより、高い虫歯予防効果が期待できます。
同じような食生活や歯磨きをしていても、虫歯になる人とならない人、歯周病になる人とならない人がいます。この違いは、口の中の細菌バランスや歯の質、体の細菌に対する感受性が個人によって異なることが原因といわれています。
虫歯タイプと歯周病タイプでは行うべき予防処置も違ってきます。効果的な予防処置を行うためにも、自分がどちらのタイプかを知り、タイプに応じた予防処置を行うことが重要です。
| 虫歯タイプ | 歯周病タイプ | |
|---|---|---|
| 特徴 |
|
|
| 効果的な予防処置 |
|
|
「虫歯になったのは歯磨きが上手にできていないから」「虫歯にならないように歯磨きを頑張りましょう」、歯科医院でこのように言われたことはないでしょうか。
実は、歯磨きが虫歯予防に効果的であるかは現在でも分かっていません(歯周病予防には極めて効果的だということは証明されています)
新潟県燕市の小学生を対象とした研究では、4つの小学校のうち、A校は毎給食後に歯磨きを行い、B校は週3回のフッ素入りうがい薬でのうがい(フッ化物洗口)を、残る2校(C校、D校)では特記すべきに歯科保健対策は採られませんでした。
その結果、フッ化物洗口を行ったB校では虫歯の数が大きく減少したのに比べて、毎日歯磨きを行ったA校は何もしなかったC校・D校と大きく変わりませんでした。
このように歯磨きが虫歯予防に有効ではないという報告は複数あり、現時点でも歯磨きが虫歯予防に効果的であるという強いエビデンスはありません。(引用4)
歯科医院で行うメインテナンスの頻度については、現在のところ明確な基準はないものの3～6ヵ月に一度の頻度が一般的であると考えられます。メインテナンスの頻度は患者さまのお口の状態によって変わり、ブラッシングの状態が良く虫歯や歯周病のリスクが低い方では1年に1度のメインテナンスで十分である一方、患者さま自身の歯磨きでは汚れが取りきれない部位がある方や、リスクが高い方は1～2ヵ月に1度の頻度でメインテナンスに通っていただくこともあります。
引用文献
引用1：The long-term effect of a plaque control program on tooth mortality, caries and periodontal disease in adults. Results after 30 years of maintenance. P Axelssonら. J Clin Periodontol 2004 Sep;31(9):749-57 引用2：PRESIDENT 2012年11月12日号 株式会社プレジデント社 引用3：Association of tooth loss with Alzheimer’s disease tau pathologies assessed by positron emission tomography. Hideki Matsumotoら. Journal of Alzheimer’s Disease, vol. 96, no. 3, pp. 1253-1265, 2023. 引用4：学校歯科保健対策における歯口清掃指 導およびフッ素洗口法の評価.筒井 昭仁ら.口腔衛生会誌 1983；33（1）：79-88．