インプラント周囲炎
インプラント周囲炎
数ヵ月にわたる治療を経て、ようやくインプラントに最終的な被せ物が入りました。ホッとする気持ちも分かりますが、これで“治療終了”ではありません。
インプラントを長期間にわたり健康に維持していくためには、日々のケアや定期的なメインテナンスが欠かせません。これらを疎かにしてしまうと、インプラントの歯周病と言われるインプラント周囲炎になってしまいます。
インプラント周囲炎とは、インプラント周囲の組織が細菌(プラーク)に感染し、インプラントを支える骨が溶けてしまう病気です。
インプラントは虫歯にならないため、天然歯よりも強いと思われがちです。しかし、インプラントには“結合組織性付着”という天然歯には備わっている防御機構が存在しないため、細菌に対する抵抗力が天然歯に比べて脆弱です。そのため、一度インプラント周囲炎を発症してしまうと、歯周病よりも速いスピードで骨の吸収が進んでしまい、最悪の場合インプラントが抜け落ちてしまうこともあります。(引用1)
インプラント周囲炎の発症率について多くの調査が行われており、現在では埋入されたインプラントの約10%、つまり10本のインプラントのうち1本はインプラント周囲炎になると言われています。(引用2)
また、虫歯になりやすい人・なりにくい人がいるのと同じように、インプラントにおいても“インプラント周囲炎になりやすい人” がいることが分かっており、
はインプラント周囲炎にかかる可能性が高いことが報告されています。(引用3)
これらの症状はインプラント周囲炎のサインである可能性があります。
インプラント周囲炎に一度なってしまうと、患者さま自身のブラッシングだけで完治することはありません。専門的な治療を受けずにインプラント周囲炎を放置するとインプラントが抜け落ちてしまう可能性があります。
長い時間と高い費用をかけて行ったインプラントを長持ちさせるためにも、上記のような症状が認められた際にはインプラント周囲炎治療を専門とする歯科医師の診察を受けられることをお勧めいたします。
初期のインプラント周囲炎では歯茎を切開しない「非外科的治療」で完治する可能性がありますが、中等度~重度のインプラント周囲炎では多くのケースで歯茎を切開する「外科的治療」が必要になります。
インプラント周囲炎は、病状が進行するにつれて治療の成功率が下がることが報告されています。(引用4)
ご自身のインプラントに不調を感じられましたら、なるべく早期の受診を推奨いたします。
インプラント周囲炎の重症度 | 軽度 | 中等度 | 重度 |
---|---|---|---|
治療の成功率 | 82% | 50% | 22% |
1.インプラント周囲炎治療に精通した歯科医師が対応
インプラント周囲炎治療には、専門的な技術や知識が必要とされます。当院でインプラント周囲炎治療を担当する歯科医師は、インプラント周囲炎治療に関する執筆や講演を多数行っており、多くの患者さまに安心して治療を受けていただくことができます。
2.インプラント周囲炎治療に特化した器具を使用
インプラントは形態や材質が天然歯と大きく異なるため、治療には専用の器具が必要になります。当院では、インプラント周囲炎治療に特化した清掃器具を複数取り揃えています。
3.高い治療成功率
インプラント周囲炎の治療は難しく、世界的にも成功率は30%~60%であることが報告されています。当院では、大月基弘先生(DUOデンタルクリニック院長:ヨーロッパインプラント・歯周病専門医)の提唱している治療プロトコールに則り治療を行うことにより、70%以上の治療成功率を記録しています。(引用5)
1
インプラント周囲の検査
インプラント周囲の歯周ポケットの深さを検査します。またX線画像検査では、肉眼では見ることのできない骨の状態も調べます。
2
治療方針の相談
検査結果をもとに、インプラント周囲炎になったインプラントの治療方針について患者さまと話し合います。治療の成功率や費用、治療にかかる期間、患者さまの希望もお聞きしたうえで最終的な治療方針を決定します。
3
非外科的治療
インプラントの保存を試みる場合、まずは非外科的治療を行います。超音波機器を用いたインプラント表面の清掃のほか、インプラント周囲の歯磨き指導もさせていただきます。インプラント周囲炎治療を成功に導く上で歯磨きのレベルの向上は必須です。
4
外科的治療
非外科的治療でインプラント周囲炎が治らなかった場合、外科的治療を行います。歯茎を切開することにより、インプラント表面の汚れがハッキリと確認できます。マイクロスコープやインプラント周囲炎治療に特化した器具を使用し、インプラント表面の細菌を徹底的に除去します。
5
メインテナンス
インプラント周囲炎が治り、周囲の組織が健康に回復したのを確認した後は、定期的なメインテナンスを行い健康な状況を維持していきます。もしもインプラント周囲炎が治らなかった場合は再治療、もしくはインプラントの撤去を行います。
費用(税込み) | |
---|---|
インプラント周囲炎治療(1本目) | 110,000円 |
インプラント周囲炎治療(2本目以降) | 55,000円 |
骨補填材/メンブレンの使用 | 55,000円 |
引用1:Experimental periodontitis and peri-implantitis in dogs. Olivier Carcuac ら. Clin Oral Implants Res 2013 Apr;24(4):363-71
引用2:Effectiveness of Implant Therapy Analyzed in a Swedish Population: Prevalence of Peri-implantitis. J Derksら1. J Dent Res. 2016 Jan;95(1):43-9.
引用3:Peri-implantitis. Frank Schwarz ら. J Periodontol2018 Jun:89 Suppl 1:S267-S290
引用4:Outcome of surgical treatment of peri-implantitis: results from a 2-year prospective clinical study in humans. Serino G, et al. Clin Oral Implants Res. 2011; 22(11): 1214-1220.
引用5:インプラント周囲疾患のすべて: Textbook of Peri-Implant Disease.鈴木 秀典ら.医歯薬出版株式会社 2022年08月10日 A4判 244頁
インプラントを長く健康的にお使いいただくためには、定期的なメインテナンスが重要です。患者さま自身では気づけないインプラント周囲炎の兆候が見つかることもありますので、一度歯科医院でチェックされることをお勧めいたします。
インプラント周囲炎の状況によってはインプラントを撤去せざるをえないこともございます。しかし、他院で抜かなければいけないと言われたインプラントであっても、治療により健康な状態に回復したケースは数多くありますので、一度ご相談いただければ幸いです。無料メール相談も行っておりますので、お気軽にご相談ください。