根管治療 、薬の交換は何回ぐらいするのが普通?|【公式】斉藤歯科クリニック|奈良県大和高田市の歯科・口腔外科・小児歯科

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根管治療 、薬の交換は何回ぐらいするのが普通?

根管治療 、薬の交換は何回ぐらいするのが普通?|【公式】斉藤歯科クリニック|奈良県大和高田市の歯科・口腔外科・小児歯科

根管治療 、薬の交換は何回ぐらいするのが普通?

・根管治療(歯の根っこの治療)をしているが、毎回お薬を交換するだけで治療が終わらない。

・「お薬を変えておきました」と言われるだけで、数か月も根管治療のために通院している

・根管治療のために何回通院する必要があるのか?

このような疑問を抱えて来院される患者様は少なくありません。

そこで今回は、根管治療で行われる“お薬の交換”とは何か、お薬の交換は何回も通院する必要があるのか、について解説します。

 

 

結論:お薬の交換に何度も通う必要はありません。

まず結論からお伝えすると、根管治療中にお薬の交換に何度も通う必要はありません。通常、お薬の交換は1~2回であり、3回以上お薬の交換することはほとんどありません。

2024年の論文でも、

In general, intracanal medication is typically performed 1–2 times during interappointment visits. It is advised to consider an alternative treatment plan rather than repeating the same medication for more than three visits. 一般的に、根管貼薬(お薬の交換のこと)は、診療と診療の間の来院時に12回実施される。3回以上の通院で同じ治療を繰り返すよりも、別の治療計画を検討することが推奨される”、と述べられています。(参考文献①)

当院でも、精密根管治療のトータルの通院回数は前歯・小臼歯で1~3回、大臼歯で24回の通院であり、お薬の交換回数は12回であることがほとんどです。

 

そもそもお薬の交換とは何か?その目的と使用する薬剤について

根管治療の目的は【根管治療の成功と失敗を左右するものとは?根管治療で後悔しないために。】で解説しているように、根管(歯の根っこ)の中の細菌をできる限り減少させることです。

そのためには①ファイルと呼ばれる機器で根管内を削り、細菌が付着している歯質を除去する(根管拡大)、②根管拡大で除去できなかった細菌を洗浄液で殺菌・除去する(根管洗浄)③1~数週間の期間、根管の中に薬剤を入れて残った細菌を殺菌・除去する(根管貼薬)、④ガッタパーチャやコアと呼ばれるもので根管内を緊密に充填し、細菌の侵入・増殖を防ぐ(根管充填・コア築造)、という4ステップを適切に行う必要があり、“お薬の交換”はこのステップ③根管貼薬になります。

根管貼薬に使用される薬剤は、以前はホルムアルデヒド製剤とよばれるものが多く使用されていましたが、ホルムアルデヒド製剤は毒性が高く、アレルギーや発がん性の問題も明らかになってきたことから現在では使用されることは少なくなっています。そのため現在では、殺菌効果と生体への安全性のバランスが良い水酸化カルシウムという薬剤が根管貼薬剤の第一選択として用いられています。

 

根管貼薬(お薬の交換)を何度も繰り返す必要はあるのか?

ではこの根管貼薬は何回繰り返すべきでしょうか? “根管貼薬 何回する?”WEB検索すると、「症状が消えるまで根管貼薬を何回も繰り返し、場合によっては数ヶ月続けることもありまず」との記されているページもあります。しかし、冒頭でも述べたように、数か月にわたって何度も根管貼薬を繰り返す必要はないと考えられており、その理由として以下の3つが挙げられます。

①何度も根管貼薬をすることによる効果が認められない

現在のところ、お薬の交換(根管貼薬)を何度も繰り返すことにより、より良い治療結果が得られるという強い根拠はありません。適切な根管拡大が行われていれば、根管貼薬の回数は12回で十分であり、それでも症状が治まらない場合は根管貼薬では解決できない別の理由が考えられます。(「根管治療がいつまでも終わらない」はなぜ起こるのかで詳しく解説しています)

症状が落ち着かない場合、根管をより大きく拡大し根管貼薬を行うという方法もありますが、過剰な根管拡大は歯の強度を低下させてしまうためあまり推奨されません。

②水酸化カルシウムを長期間使用すると、歯の強度が低下する

水酸化カルシウムは、殺菌効果や痛みを抑える効果のある優れた薬剤ですが、歯の成分を溶かすことが知られています。そのため、水酸化カルシウムを使用した根管貼薬を長期間行うと歯の強度が低下してしまい、60日以上使用すると歯が割れやすくなるという研究結果も報告されています。(参考文献②)

③治療期間が長期にわたると、歯の中に細菌が入り込むリスクが増える

根管治療を成功させるために最も重要なことは、根管内の細菌の量をなるべく少なくすることです。唾液の中には多量の細菌がいるため、治療中に唾液を根管内に入れないことが根管治療成功の必須条件となります。何度も繰り返し根管治療を行い治療期間が延びると、治療中や仮蓋をしている治療と治療の間に、唾液中の細菌が根管内に入るリスクが高まります。

 

〖やることやったら最終的なお薬を入れる!〗が基本

これまで説明してきた理由から、“症状が落ちつくまで根管貼薬を繰り返す”ではなく、“適切に根管治療を行い十分に細菌量の減少が達成できたと考えられるのであれば、多少の症状が残っていたとしても根管充填・コア築造を行い、細菌が侵入しない状態で経過観察する”という治療の流れが推奨されます。

当院でも、1本の歯の根管治療のために10回以上も通院されていた患者さんが「たったの2回で根管治療が終わって不安だったけれど、本当に痛みが消えてビックリした」、「これまで通院していた時間は一体何だったのか…」と驚かれることも少なくありません。

 

根管充填後も症状が残った場合はどうする??

では、根管充填を行った後も噛むと痛い、響くといった症状が残る場合はどうするべきでしょうか。再度同じように根管治療を行うのでしょうか?答えはNoです。歯の根管は非常に複雑な形をしており、通常の根管治療(非外科的根管治療ともいいます)を適切に行っても治らない(症状が治まらない)ケースがある一定割合存在します。そのようなケースに対して、何度も同じ非外科的根管治療を繰り返したとしても、治らないだけではなく逆に歯の寿命を縮めてしまうことに繋がりかねません。そのため、根管充填後も不快な症状が長く続くケースでは、非外科的な根管治療を再度行うのではなく、歯根端切除術や意図的再植術野といった外科的根管治療へ移行することが推奨されます。

 

根管治療は、歯の治療の中でも高度な技術・知識・経験が必要とされる分野です。根管治療に関する悩みを抱えられている患者様は、根管治療に精通した歯科医師の診察を受けられることを推奨します。

 

当院の根管治療についてはこちら。

 

参考文献

①Expert consensus on irrigation and intracanal medication in root canal therapy

X Zou et al. Int J Oral Sci (2024)

②Long-term calcium hydroxide as a root canal dressing may increase risk of root fracture

JO Andreasen et al. Dent Traumatol (2002)