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「インプラントから血が出る‥」 は危険なサイン。放っておくと手遅れになるかも‥‥
「インプラントの周りが腫れている」
「歯磨きのときに血が出る」
「膿が出て嫌な臭いがする」
そんな症状がある場合は、“インプラント周囲炎”のサインかもしれません。
インプラント周囲炎は、治療せずに放置するとインプラントがダメになってしまう恐ろしい病気ですが、適切に対応すれば多くのケースで治すことができます。
『せっかく頑張って入れたインプラントが数年でダメになってしまった‥』とならないためにも、本日はインプラント周囲炎とその治療ついて解説します。
↑インプラント周囲炎治療のオペ動画はこちらから。
インプラントを入れたからもう大丈夫!そう思っていませんか?
数ヵ月にわたるインプラント治療が終わり、ようやくインプラントに最終的な被せ物が入りました。「やっと治療が終わった。これで歯医者への通院も終わりだ」と、ホッとする気持ちも分かります。
しかし、インプラントは“入れて終わり”ではなく、“入れてからが本当のスタート”です。
インプラントを長く健康に維持していくためには、日々のケアや定期的なメインテナンスが欠かせません。
これらを疎かにしてしまうと、インプラントの歯周病と言われるインプラント周囲炎になってしまいます。
インプラント周囲炎とはどのような病気か
インプラント周囲炎とは、インプラント周囲の組織が細菌(プラーク)に感染し、インプラントを支える骨が溶けてしまう病気です。

歯を支える骨が溶ける病気が歯周病ですので、いうなれば歯周病のインプラント版です。
金属でできているインプラントは虫歯にならないため、“天然歯より強い”と思われがちです。
しかし実際には、細菌に対する防御力は天然歯よりも弱く、感染すると急速に骨が溶けてしまうことが分かっています。
そのため、一度インプラント周囲炎を発症してしまうと、天然の歯が細菌に感染したとき(この状態を歯周病と言います)よりも速いスピードで骨の吸収が進んでしまい、最悪の場合インプラントが抜け落ちてしまうこともあります。
インプラント周囲炎の症状とは
むし歯や歯周病は、進行すると痛みや歯の動揺といった症状がでるため、患者様自身で気づくことができます。
しかし、インプラント周囲炎では多くの場合で痛みを感じず、インプラントが抜け落ちる最後の瞬間まで動揺することがないため、患者さんが痛みやインプラントの動揺を感じたときには既に手遅れになっているケースも少なくありません。
そのため、インプラントのわずかな不調のサインを見逃さず、早期にインプラント周囲炎を発見し治療を受けることが非常に重要です。
- ☑インプラント周囲の歯ぐきが赤い、腫れている
- ☑歯磨きをした際にインプラントの周りから出血する
- ☑インプラント周囲の歯茎を押すと違和感や痛みがある
- ☑インプラントから膿が出ている
- ☑インプラントから嫌なニオイがする
これらはすべて、インプラントが「SOS」を出しているサインです。
1つでも当てはまる場合は、早めの受診で“インプラントを守る”ことができます。

インプラント周囲炎にならないようにするために気をつける事とは?
インプラント周囲炎を引き起こす原因は細菌です。
つまり天然歯と同じく歯磨きを丁寧に行うことによってインプラント周囲炎は予防できます。
裏を返せば、歯磨きが不十分でインプラントまわりに細菌(プラークとも言います)が付着している場合は、インプラント周囲炎を発症しやすくなります。
ヨーロッパ歯周病学会やアメリカ歯周病学会でも、『歯医者でのメンテナンスに定期的に通わない人』や『歯磨きが十分に行っていない人』はインプラント周囲炎になりやすいことが報告されていることからも、患者様自身で日常のブラッシングをしっかりと行い、数か月に1度の歯科医院でのメンテナンスでインプラントの状態のチェックや、患者様自身では取り切れない汚れの除去を行うことが、インプラント周囲炎に対する最良の予防策となります。
インプラント周囲炎になってしまったら
インプラント周囲炎に一度なってしまうと、患者様自身の歯磨きだけで完治することはないため、歯科医院での専門的な処置が必要になります。
治療では、歯ぐきを丁寧に開き、汚れたインプラント表面をきれいに洗浄します。
“手術”というと怖い印象があるかもしれませんが、麻酔下で痛みはほとんどありません。
外科処置と聞くと敬遠される患者様の気持ちはよく分かりますが、インプラント周囲炎は外科処置を行いインプラント表面の清掃をしない限り治ることはありません。
インプラント周囲炎で当院に来院される患者様の中には、インプラントの周りが腫れる度に超音波器具を使った清掃や抗生物質の投与などの対処を他院でされたものの、一向に症状が改善せずに転院されてこられる方が多くおられます。しかし、このような非外科的な方法でインプラント周囲炎が治癒しないことは多くの論文で報告されています。(非常に軽度のインプラント周囲炎では外科的な処置を行わずとも治る可能性があります。)
また、インプラント周囲炎の進行が軽度のうちに治療することも非常に重要になります。
過去のインプラント周囲炎治療の成功率を調べた研究では、軽症のインプラント周囲炎であれば約80%の確率で成功した一方、重症のインプラント周囲炎では約20%しか治療が成功しなかったと報告されています。
これらのことから、不幸にしてインプラント周囲炎になってしまった場合、なるべく早めに外科処置によってインプラント表面の細菌を除去することをお勧めします。

インプラント周囲炎治療が行える医院はまだまだ少ないのが現状
インプラント周囲炎の治療には、専用の治療器具や術者の高い技術・知識が必要とされます。
インプラント治療を行う歯科医院は多くあるものの、いざインプラントがインプラント周囲炎になってしまった場合、適切に対処できる歯科医院はまだまだ多くないというのが現状です。
当院ではインプラント周囲炎治療にも力を入れており、歯科医師を対象にインプラント周囲炎の治療法をお伝えするセミナーのインストラクターを務めるほか、インプラント周囲炎の治療に関する書籍の執筆や学会発表も行っておりますので、インプラントでお悩みの方はお気軽にご相談ください。
まとめ
・インプラント周囲炎は、早期に発見して治療すれば十分に回復が見込める病気です。
・“インプラントが悪い”のではなく、“ケアを怠った結果”であることがほとんどです。
・正しい知識とメンテナンスで、インプラントは長持ちさせることができます
・もし違和感や出血などのサインを感じたら、早めの受診が何より大切です。
今回も最後までお読みいただき誠にありがとうございました。
本記事は、奈良県大和高田市にある歯医者(歯科医院)、斉藤歯科クリニックの齊藤伸和(日本臨床歯周病学会認定医・日本歯内療法学会会員)が監修・執筆しています。何か不明な点がありましたら、無料相談も受け付けておりますので、是非お気軽にご相談ください。
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参考文献一覧(References)
- Carcuac O, Abrahamsson I, Albouy JP, Linder E, Larsson L, Berglundh T. Experimental periodontitis and peri-implantitis in dogs. Clin Oral Implants Res. 2013 Apr;24(4):363–371.
- Serino G, Turri A, Lang NP. Outcome of surgical treatment of peri-implantitis: results from a 2-year prospective clinical study in humans. Clin Oral Implants Res. 2011;22(11):1214–1220.




